著者の稲盛和夫先生から、
「心」というタイトルの本を出したいというご相談をいただいたのが、
前著『生き方』の刊行から５年ほど経った２００９年頃だったと記憶しています。

当時、八重洲にあった京セラの東京事務所にお伺いして、打ち合せをさせていただきました。
これまで経営者として生きてきて、また人としての生き方を探究してきて、
何よりも大切なのは「心」だとわかった。
これまでにない本をまとめたい――そんなご意向を訥々と語っておられました。
そして密かに（？）『心。』プロジェクトは動き出していたのですが、
それからほどなく稲盛先生は経営破綻した日本航空（ＪＡＬ）の会長に就任され、
その再生に身を投じられることになりました。
そのため、企画はいったんお蔵入りになってしまいました。
数年後、見事にＪＡＬの再生を成し遂げられた先生に、
再度、ご著書のお願いをしました。
その体験を踏まえて、経営の極意について語っていただく企画をご相談したのです。
しかし、そこからさらに数年、一進一退の時期がありました。
やがて、原点に戻るべく『心。』というタイトルでの出版をあらためてご提案、快諾いただき、３年の期間を費やしてまとめていただいたのが本書です。

まさに稲盛先生の人生の集大成、
その「哲学」の神髄が見事に表現された一冊に仕上がったと思います。
本書に込められた年輪を感じながら、ぜひご一読いただければ幸いです。