【特別ルポ】『いのちのまつり』の故郷、沖縄に行ってきました! いのちのまつり
いのちのまつり

作:草場一壽
絵:平安座資尚
2005年2月3日 琉球新報(夕刊)より

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 2月上旬の数日間、『いのちのまつり 〜ヌチヌグスージ〜』の著者・草場一壽さんといっしょに、絵本の舞台となっている沖縄に行ってきました。「やっぱり物語の舞台となっている本家本元へ御挨拶に行かないとね」、草場さんのひと言から小さな旅は実現しました。
 まずは空港で草場さんご一行(ご本人とマネージャーFさん)と絵本の「命」ともいえる絵を描かれた沖縄在住のイラストレーター、平安座資尚さんと合流。一路、取材を依頼してくださった「琉球新報社」へ。女性記者の熱心な取材を受けながら、絵本の誕生秘話を語る草場さんと平安座さん。後日、とっても大きく掲載された記事に感謝感激! はるばる東京の小社まで何本も問い合わせの電話がありました。





沖縄から世界へ! 貴重な3ショット。
右から
草場さん、稲嶺県知事、平安座さん
 その足で一行は沖縄県庁へ。なんと、稲嶺惠一沖縄県知事を表敬訪問することになりました! じつはこれ、もちろん急に決まったわけではなく、他県の知事数名のご尽力により実現したもの。『いのちのまつり』のすばらしさを知った稲嶺県知事も快く承諾してくださったそうです。沖縄そばで腹ごしらえをすませた私たちは、緊張しながら知事室へ。笑顔いっぱいで迎えてくださった稲嶺知事からは、沖縄の伝統的なお墓参り「清明祭(シーミーサイ)[詳細は後述]」についてのご体験談をうかがいました。
 その後は、沖縄県教育委員会や沖縄県教育庁、日本保育協会沖縄県支部を訪問。沖縄の空に輝く太陽のごとく、ほんとうに優しく、笑顔で受け入れてくださった皆さん。
 「『いのちのまつり』は沖縄でも評判ですよ。幼稚園や小学校では、けっこう子供たちに読み聞かせています」と嬉しいお言葉。日本保育協会沖縄県支部のS支部長さんからは、「近々、支部の会合がありますからみんなで使いますね。100冊送ってください」とご注文までいただくことに。即決の心意気にまたまた感激! 「それよりも、さあさあ食べて食べて」と手作りのサーターアンダギー(沖縄のドーナツ)や月桃もち、たんかんを振る舞ってくださいました。


草場さんの手がジャコビに伸びる!
 そして休む間もなく、レンタカーを走らせて「NHK沖縄放送局」へ。その頃には沖縄も夕暮れ時になっていました。これから局内のスタジオにて、草場さんのインタビューが行われます。『いのちのまつり』は永遠に続く命の連鎖を、誰にでもわかりやすく表現した仕掛け絵本で話題になっていますが、今回の沖縄訪問も、ここでは書ききれないくらい大勢の人たちのつながりで実現したことがほとんどでした。NHK午後6時台のニュース番組に出演が決まったのも、以前、ガイア理論のジェームズ・ラブロック博士からの寄稿(小社刊『地球交響曲第四番イメージブック』に掲載)を手助けしてくださった沖縄在住のKさんのお力なくしては叶いませんでした。なんと、ご主人が局の記者さんだったのです。絵本を見ていただき、この本の誕生には青少年犯罪に心を痛めた作者の思いがあったこと、ほとんどが口コミで45000部も全国に広がっていったこと、などを話しました。するとKさん経由で即決のお返事が。トントントンと話は進み、この日の収録となったのでした。
 3ショットにも応じてくださったキャスターのOさんは、後日、「くすぬち平和文化館」で開かれた草場さんの講演会にも来てくださいました。



とってもキレイな読谷小学校の体育館
 翌日は、早朝から「読谷村立 読谷小学校」へうかがいました。
 じつは、『いのちのまつり』に登場する「おばぁ」には、Hさんという実在のモデルがいます。おばぁにしてはまだまだ若い沖縄の女性ですが、草場さんが「心の師」と仰ぐのがわかるくらい、頼もしくて芯の強い人。彼女の計らいで、早朝講演会が実現したのでした。
 真新しい体育館には、すでに幼稚園児&小学生計800人近い子供たちが集まっていました。 草場さんが登場すると、大きな拍手が! 彼らを前に、プロジェクターを使った草場さん手作りの動くDVD版『いのちのまつり』で読み聞かせ。元保母さんだったマネージャーFさんの朗読をバックに、子供たちの顔は画面に釘づけでした。読み聞かせのあとは、草場さんのミニ講演会。絵本が生まれた背景や子供にまつわる話など。そして最後は最前列の子供たち30人ほどを立たせて、「いのちのワークショップ」を行いました。いちばん端の子供を最初のご先祖様に見立て、横の人たちへ順番に、この日のために草場さんが制作した拡大版「いのちのかけじく」をバトン代わりとして渡していきます。こういう掛け声とともに……。


真剣にワークショップを見つめる
子どもたち
「いのちのバトンをつないでくれよ!」
一人ひとりに寄り添う草場さんの口からは「6代目―っ!」「10代目―っ!」「14代目―っ!」とご先祖様を数える大声が。会場も大盛り上がりでした。
 講演会やワークショップも終了し、校長室に招かれた私たちのまわりには、お母さんたちで作られている読み聞かせの会の皆さんも勢ぞろい。感謝にさし出された手を握りながら、草場さんが話した言葉が印象的でした。
「子供たちに、ご先祖様はたくさんいるよ、と言っても、『たくさん』の経験が一人ひとりによって違うから、なかなか思いが通じませんよね。でもね、この絵本の仕掛けをバーッと広げたときに、子供たちから『うわーっ!』って驚きの声があがりますけれど、その驚きの歓声のなかには、『たくさん』が経験として芽生えるわけですよ。だからこそ、ふたたび『たくさんのご先祖さま』と話したときは、あのビジュアルをそのまま思い浮かべてくれるのです」


優しい琉球放送のキャスター柳卓さん(左)
 この絵本の醍醐味のひとつでもある、数千の顔が浮かんだ「いのちの連鎖図」(とでもいっておきます)。800人の子供たちの心に、どのような経験の種がまかれたのでしょうか? 考えるだけでワクワクする早朝講演会でした。
 この日は、琉球放送の番組「柳卓のみみぐすい」内のゲストインタビュー収録も体験。約7分間とはいえ、ここはしゃべりの旨い草場さん。絵本ができた背景を語りながら、なぜ沖縄なのかを熱く語りました。もちろん本番一発で収録を終えました。
 午後には、浦添市内の「ありあけ幼稚園」でも読み聞かせの会を開催。草場さんの突然の発案で、何と私Fが読み聞かせることに。年少さんから年長さんまで、総勢40人くらいの園児たちに囲まれて、やんややんやと言われながら、全身で汗をかきながら、何とかお役を終えました。妙に緊張した10分ほどでしたが、これも貴重な体験でした。



真剣なまなざしで
講演を聞く沖縄のお母さんたち




支えてくださったスタッフと記念ショット
 前夜の大宴会で飲んだ泡盛が体から抜けないまま、沖縄3日目のメインイベントは、沖縄市にある「くすぬち平和文化館」で開かれた大人向けの講演会。約80名ほどの聴衆の9割が子育て中のお母さんです。九州男児・草場さんの笑いあり、涙ありの2時間は、いのちの話あり、教育の話あり、芸術の話ありとバラエティーに富んでいました。
 終了後のサイン会にも長蛇の列が。育児のたいへんさや悩みは全国共通ですが、どのお母さんの顔も講演後はイキイキと輝いていました。「こういう場所が、僕もほしいなぁ……」、絵本のショップも併設したこの施設は、未来を築いていく子供たちのために、沖縄の歴史と文化をベースにした情報発信基地の役割も担っています。
 そして一行は、那覇市でいちばんにぎわうメインストリート「国際通り」へ。なんと、この通りの少し入ったある場所に、絵本の主人公コウちゃんが目にしたお祭の舞台、イラストレーター平安座さんの門中のお墓があるのです。聞くところによるとこのお墓は「亀甲墓(きっこうばか)」と呼ばれ、その内部は小さいものでも6〜8畳ほどの広さがあって、先祖代々の遺骨が収められているそうです。外観は、ちょうど女性が寝そべって股を広げた形になっていて、中央の、お骨を入れる入り口が女性の「産道」の意味合いだとか。人は死んでも、また生まれてきた道を通って帰る……なのでしょう。


とても母性あふれる平安座家のお墓
 太陰暦の清明の節(四月初旬)にはお墓の前で一門が集まった「清明祭(シーミーサイ)」が開かれます。特別の料理を用意し、お参りが終わると飲めや歌えやの大宴会。子孫みんなが仲良く元気であることがいちばんの先祖供養である――とくに沖縄本島に残る習慣だそうですが、この日は、清明祭とまではいかないものの、絵本のお礼を込めて、草場さん、平安座さん、マネージャーFさん、私、そしてお祈りを唱えてくれた「おばぁ」ことHさん、Hさんの娘さんのみんなでお参りをしました。
 小道ひとつ隔てた通りの喧騒も聞こえることなく、Hさんの祈りの言葉だけがお墓の前で響きました。あまりにも言葉で表現することが難しくて残念ですが、沖縄の方言で語られる言葉一つひとつが、体の細胞にまで染み込んでいくようで、とても厳粛で、濃厚な数十分でした。平安座さんのご先祖様を見ることは当然できませんが、絵本の仕掛け部分に浮かぶたくさんの顔のように、きっとどこかで見守りくださっているのでしょう。

 数日間訪れた沖縄での、ほんの一部の体験をまとめてみました。
 いま、日本全国の子供たちは、大人同様にさまざまな問題を抱えています。この島・沖縄でもそれはきっと変わらないことでしょう。しかし、この島には、問題と同時に、その答えも存在しているような気がしました。「いのちが、生活のすぐそばに在る」――著者の草場さん、イラストの平安座さんとともに、たくさんの島の人たちと話をさせていただきましたが、話せば話すほど、絵本『いのちのまつり』が表現してくれている大切なメッセージを体感できた気がします。
 私たちは「つながっている」ということ、「つながっていく」ということ……。
(文責F)

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