![]() |
![]() |
|
| 若い女性に人気の絵本作家、葉祥明さん。なかでも昨年、小社から刊行された葉さんの絵本『おなかの赤ちゃんとお話ししようよ』『生まれた赤ちゃんとお話ししようよ』はのべ5万人を超える読者に読まれ、妊娠・出産して子育てに励む女性のあいだで深い感動の渦を巻き起こしている。その葉さんが今春3月、新しい絵本を発表した。題材は「ハンディキャップをかかえた赤ちゃん」だという。その美しい絵と心あたたまる文から、こんどはいったいどんなメッセージを私たちに伝えようとしているのだろうか。 |
![]() |
――今回の絵本では「ハンディキャップをかかえた赤ちゃん」がテーマとなっていますね。どうしてこういう内容の絵本をつくろうと思ったんですか。 赤ちゃんを身ごもり、出産して、育てていく。それはそれでもちろん大変なことですが、なんだかんだいっても、それでおかあさんは幸せなはずなんです。ところが、赤ちゃんがなんらかのハンディキャップをかかえて生まれてきたという状況に直面したとき、おかあさんの多くは衝撃を受けるわけです。「なぜ?」と。絶望する人もいるかもしれませんね。 なかには自分の運命を嘆いて、追い詰められる人もいるでしょう。そういう状況からどうやって立ち直っていくか。これってものすごく重要なことです。 まわりの人も「出産おめでとう」と素直に言えなかったりして、それがまたおかあさんを苦しめてしまう。いまの社会そのものに、「ハンディキャップをかかえた子ども」を受け入れる素地が、物理的にも精神的にもまだまだできていないということですよ。 これではおかあさんにとってあんまりですよね。そして、つい自分を責めてしまいます。「妊娠中、へんなものを食べてしまったのだろうか」とか、「わたしのせいだろうか」という具合にです。 でも、けっしておかあさんが悪いわけではない、いや、だれも悪くない、それどころか、そんな赤ちゃんはおかあさんに感謝さえしているんですよ。そういうようなことを伝えられないかなと思って……。 |
|
| 〈うまくいえないけど、 このカラダは、ボクじしんがのぞんだものなんだよ。 だから、ママは、もうじぶんをせめたりしないでね。 むしろボクは、ありがとうって、いいたい! こんなふうにうんでくれたママに、 こころから、ありがとうって……。〉――本文より |
| ――葉さんご自身は「ハンディキャップをかかえた赤ちゃん」を育てた経験が特にないですよね。どうして、そういう親の気持ちがわるんですか。 ぼく自身、実際には体験していないわけですから、そういう方々の気持ちがどこまで理解できているかというと、もちろん限界があります。 でも、そういうことではないんです。 ぼくは以前からずっと、この世で弱者とされる存在が発しているメッセージに耳を澄ませてきました。 人間以外の動物や、女性や子どもたち。あるいは失われていく緑であったり、汚されていく自然であったり……。 この世にあるものは、「ただある」のではない。 すべての存在はなにかしらのメッセージを発しているんです。その「声なき声」が聴こえるかどうか。耳を澄まそうという心になっているかどうか。 それが大切なんです。 多くの人は日常のさまざまなことに気をつかい、消耗してしまって、心も体もリラックスできなくなっている。 だから、耳を澄まして「声なき声」を聴くことがむずかしくなってしまったんでしょうね。 |
![]() |
――そういえば、葉さんの絵をみていると心が落ち着いてくるという声が、読者からたくさん寄せられているんですよ。 そう言ってもらえると、うれしいですね。リラックスすると、ニュートラルな意識状態になってきます。それが、「声なき声」が聴こえる状態なんです。ですから、ぼくの絵を眺めてもらって、リラックスした状態で、絵本のページをめくっていく。そうすると、メッセージがすっと入ってくるというわけです。敏感に感じやすくなっているんでしょうね。 この絵本の文はぼくが書いたということになっていますが、本当はそうじゃない。ぼくは「ハンディキャップをかかえた赤ちゃんの声なき声」を聴いて、ただそれを書きとめたと自分では思っているんですよ。 この絵本を通じて、この「声なき声」を、それを本当に必要とする人、とりわけおかあさんたちに届けたい、というのがぼくの願いです。 |
| ―― 「障害」という言葉を使わずに「ハンディキャップ」という言葉を使っているのにはなにか意味があるのですか。 「障害」という言葉からはなにかマイナスのイメージが浮かんできますが、 ぼくはすごく広い意味で「ハンディキャップ」というものをとらえています。人はだれでもなにかしらのハンディキャップをかかえながら生きていると思うんですよ。お金に不自由しない人も、勉強のよくできる人も、運動神経抜群の人も、仕事ができるといわれている人も、みんな必ずハンディキャップやコンプレックスをどこかにかかえている。完ぺきな人なんていないわけです。でも、そのことに気づけば、人は謙虚になったり、他人の心の痛みがわかったりすると思う。 すべての人がハンディキャップをもっていて、気がつかないうちに、だれかにささえられているのです。自分もだれかにささえられているということがわかって初めて、感謝の気持ちもわいてくるんです。だから、ハンディキャップをかかえて生きるというのは、隠すべきことでもないし、恥ずかしいことでもない。じつは、とても素晴らしいことなんです。そんなふうに思えたとき、初めて人は、自分の人生の意味というものが見えてくるんじゃないでしょうか。 |
![]() |
―― ひと言でハンディキャップといっても、重いものから軽いものまでありますね。 そのとおりです。言い方はとてもむずかしいのですが、重いハンディキャップを背負っている人は、自分の人生を懸命に生きざるをえなくなる。命がけで生きていると思うんです。困難な状況にある人は、そうでない人より、自分の存在と人生の意味について、日々真剣に命がけで考えていると思います。 この世はね、「命のふれあい」で成り立っていると思うんですよ。命が命とふれあったところに、喜びや感謝の気持ちが生まれ、愛が満ち満ちてくる。「生んでくれて、ありがとう」というのは同時に、「生まれてきてくれて、ありがとう」と同じことを意味しています。それは真の学びに至ったおかあさんの、わが子への感謝の気持ちとも通じているのです。 |
| インタビューは、北鎌倉にある葉祥明美術館で行われました。 |
| 〒247-0062 神奈川県鎌倉市山之内318-4 TEL 0467-24-4860 FAX 0467-24-6536 会館時間:10:00am〜5:00pm 休館日:なし 入館料:大人600円・小人300円 JR横須賀線北鎌倉駅下車 徒歩7分 |
![]() |